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<ブックレビュー>そのひとことが言えたら 女性と自信、交渉のための知恵

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そのひとことが言えたら…―働く女性のための統合的交渉術 
リンダ・バブコック サラ・ラシェーバー著

言うべき場面なのに、どうしても「そのひとこと」が言えない…

そんな経験はありませんか?

自信と勇気を得るための知恵がここにあります。

原書の出版は2003年ですが、今読んでも古くありません。社会学、経済学をもとにした研究をわかりやすく解説しています。

女性をとりまく環境を理解する本、交渉術の本として、女性だけでなく男性にも読んでいただいきたい一冊です。

女性は求めようとしない?

男性は女性よりも交渉を2、3倍行っているといわれています。

著者の調査によると、米国カーネギーメロン大学修士卒の女性の初任給は男性よりも7.6%低く、そのうち昇給を交渉した女性は7%、男性は57%。

大学の就職部が学生に対し、賃金交渉をするように指導していたにも関わらず、です。

また、自分から開始した最近の交渉も、男性は2週間前、女性は1か月前。

(※最近のデータはシェリル・サンドバーグ著『リーン・イン』参照)

いまだに女性の賃金が低く抑えられているだけでなく、交渉をしないために二重に損をする。

一方、女性は協調をもとにした交渉を行い、生産的な結果が期待できるというメリットもあります。

他人に認められるのを待ってしまう

あなたをコントロールしているのは自分自身ですか、外の世界ですか?

・自分がほしいものを与えてもらうのを待つ「人生はなりゆき」型

・求めさえすれば手に入る「自分しだい」型

著者の調査では、女性には「人生はなりゆき型」が多いという結果が出ました。

その理由は、「男とはこんなもの」「女とはこんなもの」という「ジェンダー・スキーマ」。

「現在の状況に疑問を持つことなく、それを受け入れて従う」、そんなルールを子供の頃に遊びを通じて信じてしまう。

その結果、「与えられたもの以外を求めてはいけない」と考える傾向が生まれるのです。

しかし、このような考えは学習で変えられることも近年明らかになっています。

自分の価値を低く見積もる

「女性が望みを控えめにしてしまうのは、最初から多くを期待しないから」

育児や家事は無償労働で、自分も周りもそれに慣れている場合、経済的な観点から自分の時間や労力を見られません。

また、「自分が好きだからやっている、お金のためではない」と考えた場合、自分にふさわしい報酬がわからないことも。

適切な比較、「他人の目」を通すと、自分のスキルや時間に対する市場価値がわかり、自分の価値を正確に見積もれます。

人間関係を大事にしすぎる

「他人を大切に」という他者中心の考えは、子供の頃に植え付けられた「罠」。

「人間関係を壊してはいけない」「女の子は他人を思いやらなくてはいけない」

そんな役割意識の例として、『トイ・ストーリー』に登場する、助けを求める従順な女の子のキャラクターが紹介されています。

(ちなみに、最近のディズニー映画などでは大分変化が見られます)

「女性は従順」というステレオタイプが刷り込まれると、成功した女性でも今の地位に自分は不相応と感じる「詐欺師シンドローム」を引き起こします。

しかし、そんなステレオタイプを打ち壊そうとすると、周囲の期待に反する女性への「制裁」が起こるのです。

「制裁」を恐れる女性たち

かつて女性管理職や経営者に向けた、意見はためらいがちに言う、など「レディ」になるためのリフォームプログラムが存在しました。

理由は、自己主張する女性はジェンダー規範から外れ、周囲から怖がられたり、嫌がられるため。

男性と女性に当てはめられる基準が違う「二重規範」は、今なお問題です。

タフな交渉態度、自己主張は男性では効果的ですが、女性が行うと制裁を受けるという研究結果は多数存在します。

制裁を避ける方法はいくつかあります

・「みんなから好かれたい」と思わないこと。

・女性らしい「親しみやすく、協力的で、自信を持っているが、衝突を避け、察しのよい」スタイルを戦略的に身につけること。

「なぜ女性だけが」という不満はあれど、女性という変えられない立場を理解して、賢明に立ち回ることが求められます。

男性よりも不安を感じやすく、交渉を避ける

「女性は交渉に不安を感じている」

著者の調査により、成功した女性でさえ交渉には強い不安を感じていることが明らかになりました。

しかし、交渉を避けることは得策ではありません。

交渉は大きく「立場に基づく交渉」と「利益に基づく交渉」の二つに分けられます。

相手と意見を交換し、問題を一緒に解決するチャンスととらえる「利益に基づく交渉」は女性の得意分野。

協調性を生かすことで、生産的な交渉結果につなげることができます。

また「交渉が苦手」という自信がない状態は、低い目標や低い合意につながります。

交渉学者によると、自信をつけるトレーニングには、次のようなものがあります。

・「どのようなときに不安やストレスが生じるか見極める」

・「不安を引き起こす状況への対象方法を取得し、計画を立てる」

・「誰かと一緒に自信をつける練習をする」

さらに、交渉目標の設定にもコツがあります。

・あらゆる結果を想定し、優先順位を決めて狙いどころと最低ラインを見極め、進捗状況を管理する

自分で交渉をコントロールする感覚を持つと、交渉結果はよいものになります。

女性の強みを生かし、行動につなげる

これらを実行しても、女性にはさらに大きな障害が立ちはだかります。

「相手が女性なら多めに要求せよ、そして譲歩は不要」という社会的通念です。

また、出世や権力につながる社会的ネットワークが弱く、あっても恩恵を受けにくい傾向も指摘されています。

しかし、女性の「他人のため」には頑張れるという強みを忘れないでください。

協調性を発揮すれば、一方だけが勝つ競争ではなく、win-winの関係を目指す「統合的交渉」が可能です。

解消されない女性への偏見を、どのように受け止め、行動するのか?

まずは自分自身の現状を冷静に知り、対策を学ぶことが大切です。

・「社会全体が女性に対して持っている態度を変える」

・「女性自身が自分にふさわしいものを求めて声をあげる」

本全体を通じたこの2つのメッセージが、ロングセラーの理由ではないでしょうか。

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